医療機器の販売業・貸与業

高度管理医療機器を販売するには

平成17年4月1日より施行された改正薬事法により、「高度管理医療機器」「特定保守管理医療機器」の販売や貸与業(旧称:賃貸業)を行うには、事前に許可を取得しなければならなくなりました。
また、「管理医療機器(クラス2)」(特定保守管理に該当するものを除く)の販売・貸与のためには販売業・貸与業の届出が必要です。一方、リスクの低い「一般医療機器(クラス1)」(特定保守管理に該当するものを除く)は、届出等の手続きは不要です。

扱われる製品が、どのクラスに該当するかは、製造販売元にご確認下さい。

いわゆるMS法人として、診療所や病院に対し医療機器をリース、賃貸、販売している法人は、扱い品目が高度管理医療機器もしくは特定保守管理医療機器に該当する場合、これらの許可取得が必要です。

なお、医療機関において、医師が診察したうえで、患者さんのために、療養の向上を目的として医療機器(コンタクトレンズ等)を(社会通念上適当な対価を徴収して)「交付」することは(許可なく)可能です(平成26年8月28日厚生労働省医政局総務課事務連絡)。不特定多数の人を対象としてっ診察を行わずに販売することについては、診療所とは別個の区画において許可を取得する必要があります。

医療用具から医療機器へ

平成17年4月の改正薬事法法施行により、従来の「医療用具」は「医療機器」に名称変更となり、リスクに応じた区分(クラス)が導入されました。

高度管理医療機器 クラスIII、IV 許可 要
特定保守管理
医療機器
許可 要
管理医療機器
(特定保守以外)
クラスII 届出 要
一般医療機器
(特定保守以外)
クラスI 届出 不要

営業管理者の配置

高度管理医療機器・特定保守管理医療機器
管理者
  • (1)高度管理医療機器・特定保守管理医療機器の販売の場合
    (視力補正用レンズ、プログラム医療機器を除く)

    高度管理医療機器等(視力補正用レンズ、プログラム医療機器を除く)の販売に3年従事した後、医療機器センター等の実施する基礎講習を修了
  • コンタクトレンズのみを販売する場合

    高度管理医療機器等(視力補正用レンズ、プログラム医療機器を除く)の販売に3年従事した後、医療機器センター等の実施する基礎講習を修了した者 非視力補正用コンタクトレンズ特別講習会の修了者(2009年実施)
  • プログラム医療機器のうち高度管理医療機器にあたるもののみを販売する場合

    国に登録を受けた者が実施する基礎講習(プログラム医療機器)を修了した者
  • コンタクトレンズ及びプログラム高度管理医療機器のみを販売

    上記(1)・(3)参照

    上記のほか、

    医師、歯科医師、薬剤師の資格を有する者 第一種医療機器製造販売業の総括製造販売責任者の要件を満たす者 医療機器の製造業の責任技術者の要件を満たす者 医療機器の修理業の責任技術者の要件を満たす者 医薬品医療機器等法第36条の8第1項に規定する試験に合格したとみなされたもののうち、同条第2項の登録を受けた者(みなし合格登録販売者) 公益財団法人医療機器センター及び日本医科器械商工団体連合会が共催で実施した医療機器販売適正事業所認定制度「販売管理責任者講習」を修了した者

※家庭用電気マッサージ器・家庭用永久磁石磁気治療器等、一部の医療機器のみを扱う場合については、管理者は不要とされています。

管理医療機器
管理者
  • (1)特定管理医療機器(専ら家庭において使用される管理医療機器であって厚生労働大臣の指定するもの以外の管理医療機器)の販売業者等

    1 高度管理医療機器等の販売等に関する業務に1年以上若しくは特定管理医療機器の販売等に関する業務(特定管理医療機器のうち補聴器、家庭用電気治療器若しくはプログラム特定管理医療機器のみ、又は補聴器及び家庭用電気治療器のみ、補聴器及びプログラム特定管理医療機器のみ、家庭用電気資料木及びプログラム特定管理医療機器のみ、補聴器、家庭用電気治療器及びプログラム特定管理医療機器のみを販売等する業務を除く。)に3年以上従事した後、国の登録を受けた者が行う基礎講習を修了した者 2医師、歯科医師、薬剤師の資格を有する者 3第一種医療機器製造販売業の総括製造販売責任者の要件を満たす者 4医療機器の製造業の責任技術者の要件を満たす者 5医療機器の修理業の責任技術者の要件を満たす者 6医薬品医療機器等法第36条の8第1項に規定する試験に合格したとみなされたもののうち、同条第2項の登録を受けた者(みなし合格登録販売者) 7公益財団法人医療機器センター及び日本医科器械商工団体連合会が共催で実施した医療機器販売適正事業所認定制度「販売管理責任者講習」を修了した者 8「検体測定室に関するガイドラインについて」(平成26年4月9日付医政発0409第4号厚生労働省医政局長通知)別添で定める検体測定室の運営責任者である看護師又は臨床検査技師(ただし、検体測定室における検査で使用される医療機器のみを販売等する営業所に限る。)
  • (2)補聴器のみを販売

    特定管理医療機器の販売等に関する業務(特定管理医療機器のうち家庭用電気治療器及びプログラム特定管理医療機器のみを販売等する業務を除く。)に1年以上従事した後、国の登録を受けた者が行う基礎講習を修了した者 (1)2~8該当者
  • 電気治療器のみを販売

    特定管理医療機器の販売等に関する業務(特定管理医療機器のうち補聴器のみを販売等する業務を除く。)に1年以上従事した後、国の登録を受けた者が行う基礎講習を修了した者 (1)2~8該当者
  • プログラム医療機器のみを販売

    国の登録を受けた者が行う基礎講習を修了した者

    上記のほか、

    医師、歯科医師、薬剤師の資格を有する者 第一種医療機器製造販売業の総括製造販売責任者の要件を満たす者 医療機器の製造業の責任技術者の要件を満たす者 医療機器の修理業の責任技術者の要件を満たす者 医薬品医療機器等法第36条の8第1項に規定する試験に合格したとみなされたもののうち、同条第2項の登録を受けた者(みなし合格登録販売者) 公益財団法人医療機器センター及び日本医科器械商工団体連合会が共催で実施した医療機器販売適正事業所認定制度「販売管理責任者講習」を修了した者

管理者の兼務

原則認められませんが、次の場合のみ例外的に認められます。

その医療機器の特性等からその営業所において医療機器を取り扱うことが品質管理上好ましくない場合や医療機器が大型である等によりその営業所で医療機器を取り扱うことが困難な場合等において、その営業所専用の倉庫である別の営業所を同一事業者が設置している場合であり、かつ、その営業所において実地に管理できる場合。 医療機器のサンプルのみを掲示し(サンプルによる試用を行う場合は除く。)、その営業所において販売、貸与及び授与を行わない営業所である場合であり、かつ、その営業所において実地に管理できる場合。

診療所が隣り合う場合

高度管理医療機器販売業の管理者は、「隣り合う診療所の医師」でもよいとされています(16.7.9の通知による)。

しかし、診療所の管理者(院長)である医師は、診療所に常勤していることが前提ですから、医療機器販売店の管理も同時に行うと、診療所の管理者の要件(常勤性)を欠くことになるとも考えられます。診療所、医療機器販売双方の要件を満たす事が必要です。

構造設備要件

構造

構造設備は、次の要件を満たす必要があります。

営業所

採光、照明及び換気が適切であり、かつ、清潔であること。
常時居住する場所及び不潔な場所から明確に区別されていること。
取扱品目を衛生的に、かつ、安全に貯蔵するために必要な設備を有すること。

実地調査があります。 とくに、保管庫が適切かどうかについての確認がされます。 診療所とは、完全に構造を分けて区画してください。それぞれ独立した出入口、中で行き来できない、など。=院内販売不可
※診療所の変更届・変更許可申請を要する場合あり。

「診療所」と「販売店/営業所」は分けてください。それぞれが独立した入口をもち、内部で導線が交わらないようにします。
診療所の一部を区画して販売店とする場合は、「診療所の構造の変更」を保健所に届け出る必要があります(医療法人の場合は、届出ではなく「事前に許可申請」)。

医療機器販売業の申請窓口が医療法(診療所)の所管と異なる場合には、診療所の変更手続きがされていなくても、販売業許可が出てしまっている事例がありますが、このような形で許可を得てしまうと、診療所の要件を欠いてしまいますので、ご注意下さい。

また、販売店は「医療法人名義の建物」の中におくことは、原則、できません。
医療法人は不動産賃貸業を行うことができないためです。また、無償貸借であっても、都道府県によっては医療法人の資産の流用・利益供与にあたり医療法に抵触すると解釈されている事例があります。医療法と薬機法(医療機器販売・貸与)の整合性にご留意ください。

医療機器修理業許可、古物商許可

修理を行う場合には、医療機器修理業許可が必要です

医療機器の販売、賃貸とあわせて、修理や保守点検を業として行うこともあると考えられます。

医療機器の「故障、破損、劣化等の箇所を本来の状態・機能に復帰させる」行為は修理に当たり、医療機器修理業許可が必要です。

(単純な消耗品交換や清掃、キャリブレーションは修理に当たりませんので、許可は不要です)

医療機器には修理区分が設けられており、必要な区分の許可を取得しなければなりません。

許可は「区分ごと」「事業所ごと」に取得します。

  • 特定保守管理医療機器

    特管第一区分:画像診断システム関連

    特管第二区分:生体現象継続・監視システム関連

    特管第三区分:治療用・施設用機器関連

    特管第四区分:人工臓器関連

    特管第五区分:光学機器関連

    特管第六区分:理学療法用機器関連

    特管第七区分:歯科用機器関連

    特管第八区分:検体検査用機器関連

    特管第九区分:鋼製器具・家庭用医療機器関連

  • 特定保守管理医療機器以外の医療機器

    非特管第一区分:画像診断システム関連

    非特管第二区分:生体現象継続・監視システム関連

    非特管第三区分:治療用・施設用機器関連

    非特管第四区分:人工臓器関連

    非特管第五区分:光学機器関連

    非特管第六区分:理学療法用機器関連

    非特管第七区分:歯科用機器関連

    非特管第八区分:検体検査用機器関連

    非特管第九区分:鋼製器具・家庭用医療機器関連

古物(中古品)を扱う場合は、古物商許可が必要です

中古品を販売する場合には「古物商許可」が必要です。
古物商許可は、薬事法ではなく、古物営業法に基づく許可で、事業所の管轄地域の公安委員会の所管です。

会社の設立

高度管理医療機器・特定保守管理医療機器販売業は、商行為で営利目的と考えられています。

医師の方が販売業を始めようとされる場合、診療所内においておこなうことはできません。
(医療法7条の解釈に基づく行政運用。診療所の開設許可・届出は、診療所として機能する区画として届け出ているため、販売行為を行えば目的外使用・虚偽申請となる)
また、貴院が医療法人の場合、医療法人が行うこともできません(医療法54条)。

よって、

診療所として届け出ている(または許可を得ている)範囲とは別の区画で、 販売のための会社を設立するか、個人事業として行う

ことになります。

許可は、この会社もしくは個人で、営業所(販売店)ごとに申請することになります。
#個人事業の場合、その方が事業をやめ別の方に承継する場合、許可は取り直しになりますのでご注意下さい。

ただし、この会社の役員については、医療法関連の通知により、医療法人との役員の重複がないようにするなどの行政指導が入ることがありますから、医療法人との役員の重複を避けるなど、検討が必要です。

「会社(MS法人)設立」についてはこちらをご覧下さい。

販売開始までの流れ

当事務所に許可申請手続をご依頼いただいた場合、ご依頼から販売開始までは概ね次のような流れになります。

現況確認 営業所・事務所は構造設備規則に適合する必要があります。
要件充足 構造設備、管理者の要件充足に向けて準備を進めます
先行・並行する諸手続き 会社設立、定款変更
診療所変更手続き、医療法人定款変更認可申請等
販売業許可申請 許可要件を充足したことを申請書に表し、所管窓口へ提出します
実地調査 申請書提出後、審査官により、現場の実地調査が行われます。
許可証受領 申請書、現場とも適合すれば、許可されます。有効期間は6年間です。